強迫観念に悩まされる20代男性

「〇〇しなければならない」
「自分でも不合理なことだと頭では理解しているのに、考えが浮かんで囚われてしまう」
「日常生活にも支障が出てきて、相談に来た」

相談者は医療機関にも通院しており、服薬による治療を受けながら、カウンセリングを併用するという形で相談を続けてきました。

強迫観念とは

強迫観念とは、自分の意思とは関係なく、繰り返し頭に浮かんできて、強い不安や苦痛を引き起こす考えやイメージなどを指します。

「そんなことを考える必要はない」
「頭ではおかしいと分かっている」
「考えたくない」

と思っているにもかかわらず、何度も考えが浮かんできてしまうことがあります。

そして、その不安を打ち消したり、安心を得たりするために、何度も確認したり、考え直そうとしたり、特定の行動を繰り返したりすることがあります。

こうした強迫症状への治療では、薬物療法や認知行動療法などが用いられます。

その上で、必要に応じてカウンセリングを併用するという選択肢もあります。

「分かっているのに、やめられない」という苦しさ

強迫観念について難しいのは、本人自身が「これは合理的な考えではない」と分かっていることです。

そのため、
「そんなこと考えなくていいよ」
「気にしすぎじゃない?」
「大丈夫だから、考えないようにしよう」

と周囲から言われても、それだけで解決するわけではありません。

むしろ本人は、誰よりも「こんなことを考えるのはおかしい」と分かっていても、頭に自動的に浮かんでくる。
そして、そのことを周囲に理解してもらえない。

「分かっているのに、やめられない」

この感覚そのものが、大きな苦しさにつながることがあります。

カウンセリングでは、強迫観念そのものを説得して変えるのではなく、まずはその苦しさについて理解することを大切にします。

強迫観念によって、何を守っているのか

強迫観念がある方の多くに、
「こうしなければならない」
「こうであるべき」
「こんなことを思ってはいけない」
という強い「〜ねばならない」という信念を持っている方がいます。

相談者の場合も同じで、そう強く考えるようになった背景には、これまでの経験や、その人なりの価値観、物事の捉え方が関係していることが語りの中で見えてきました。
その信念が、強迫観念という形に変わることがあります。

「白か黒かという世界」

もう一つ、考え方の特徴として、白か黒かという極端な思考になりやすいという点もあります。

強迫観念がある方の中には、

「正しいか、間違っているか」

「良いか、悪いか」

といった、極端な二択の中で考えを巡らせている傾向がありました。
「どちらとも言えない」というグレーな状態にいることを苦手とする方もいらっしゃいます。

考え方に至る背景を一緒に考える

「こうしなければならない」「こうあるべき」という信念は、どこから生まれたのか、その背景を紐解いていく作業を一緒にしていきます。

また、時には極端な思考に対して、共感だけでなく「こういう考えもあるのではないか」「他のパターンはないのか」「私ならこう考えることもある」という第3の選択肢を提示することもあります。

ただし、カウンセリングを通して、カウンセラーと相談者の間に信頼関係ができて初めて、そのやりとりに意味が生まれると考えられます。

関係性があるから伝わる

関わりを通して、信頼関係が築けたときに、カウンセラーが相談者を少しずつ理解していくのと同様に、相談者もまたカウンセラーの存在が内在化されていきます。

すると、このカウンセラーなら「どう思うだろうか」「どんな意見があるだろうか」と取り入れようとする余白が生まれていきます。
信頼関係ができているから、言葉が単なるアドバイスではなく、「そう思っても良いんだ」「そういう考え方があるんだ」という気づきへとつながります。

まとめ

・一見、強迫観念とは直接的に関係がなさそうな信念について、丁寧に扱っていくことが大切

・その信念を扱うには、カウンセラーと相談者の間に信頼関係がつくられることが重要

強迫観念との付き合いには、時間がかかることもある

長い時間をかけて身についた考え方や反応のパターンであれば、それとの付き合い方を変えていくにも時間が必要です。

時間をかけて、医療機関の治療とカウンセリングを併用しながら、少しずつ症状が改善していく方もいます。

最初は日常生活に大きな支障が出ていたものが、徐々に生活に支障がない程度になり、さらに「以前より気にならなくなった」と感じられるようになることもあります。


強迫観念や強迫行為によって生活に支障が出ている場合には、まず医療機関に相談することをお勧めします。

その上で、「薬物療法や認知行動療法とは別に、もう少し自分自身について考えてみたい」

「症状だけではなく、この考え方の背景について整理してみたい」

という方にとっては、カウンセリングが一つの選択肢になります。

自分の中にある「こうしなければならない」という一つの物語に、少しずつ別の可能性を加えていくことが、今の苦しさから距離を置くためのヒントになると考えます。

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