こんにちは。心理士の林です。私はスクールカウンセラーとして週2、3日、学校に勤務しています。スクールカウンセラーを始めて、11年目となりました。
スクールカウンセラーを始めたばかりの頃に比べると、相談室の利用者は年々増えている印象です。また、カウンセラーの数や配置される時間など、着実に増えてきており、心理カウンセリングの需要の高まりを日々感じています。さらに5年前に公認心理師という国家資格ができ、今後も心理士の活躍の場が広がるであろうと予想されます。
一方で、カウンセリングを受けることへの抵抗感を持っている方も、まだまだ多く存在しています。カウンセリングを受けたことがある人は、日本では10%前後であるのに対し、欧米では30%〜50%になるというデータがあります。カウンセリングの需要は増えつつあると言っても、まだまだ身近になっているとは言い難い状況です。
学校の心理相談室事情
多くの小中高校にはスクールカウンセラーが配置されており、相談室が用意されています。大学にも学生相談があります。その配置されている時間数・日数や、カウンセラーの数などは自治体によって様々です。
例えば名古屋市の場合、小学校には週1日程度スクールカウンセラーが配置されており、中学校には常勤のスクールカウンセラーが毎日います。高校には週3日程度の配置される時間が用意され、多くの学校で2、3人のカウンセラーが曜日ごとで分担して勤務しています。
予約までの流れは、学校によってスクールカウンセラーに繋ぐための窓口となる先生(教頭、保健部の教員、養護教諭等が担当している場合が多い)か、担任や養護教諭にカウンセリングを受けたい旨を伝えます。そこでカウンセラーの予約を取って、日時を決め、実際に受けに行くということになるかと思います。
また気になる生徒には先生の方から声をかけられ、カウンセリングを勧められるパターンや、学校で実施している“こころのアンケート”のようなものから、カウンセリングに繋がるパターンなどもあります。
カウンセリングに興味がある学生や保護者の方、迷うなら受けた方が得
まだまだ身近ではない心理カウンセリング。受けることに抵抗感や不安があるのは最もだと思います。しかし学校の相談室を利用して、得することはあっても、損することはありません。
その理由は
1、学校のカウンセリングは予約がとりやすい
人気のある心療内科や精神科に行こうと思っても、すぐには予約が取れなかったり、場合によっては何ヶ月待ちということもあります。そもそも数ある病院からどこに行けばいいのかわからない、探すうちに「もういいか」と行く気持ちが萎えてしまうこともあります。その点、学校のカウンセリングは先生に連絡するだけで、スムーズに予約が取れます。カウンセリングのお試しとしては最適です。
2、無料で受けられる
心療内科や精神科ではカウンセリングが保険適応されない場合や、適応されても料金はかかります。そもそもカウンセリングを行っていない病院もあります。個人開業の心理相談室(当相談室もそうです)でカウンセリングを受けると、相場は8000円〜12000円くらいかかります。その点、学校の相談室では同じ資格(臨床心理士・公認心理師)を持った専門家に無料でカウンセリングが受けられます。
3、どんな話をしても大丈夫
意外と病院では病気ではない(診断がつかない)と判断されると継続的にカウンセリングを受けることができないところが多いです。学校の相談室では、“病院に行くほどではないけど悩んでいる”という人にもおすすめです。よく「カウンセリングでどんな話をしたらいいかわからない」と言う意見を聞くことがありますが、どんな話をしても大丈夫です。うまく話せなくても、プロのカウンセラーが話を引き出してくれるので、身を任せる気持ちで行っても大丈夫です。
他にも学校のカウンセリングを受けることで、「先生の評価に影響が出るのではないか」、「あまり家の秘密を知られたくない」といった抵抗感を持つ方もいらっしゃいます。まず先生からの評価は一切影響がないので、安心してください。また秘密については、カウンセリングは守秘義務のもと行われるので、誰かに秘密が漏れることはありません。例外として自傷他害の可能性、命の危険がある場合等の緊急性がある場合は、学校全体で対応しなければいけないので、情報を共有することがあります。しかし、それも相談者にその旨を伝えるので、勝手に話が広がるということはありません。
カウンセリングを受けたことがあるという経験はいつか役に立つ
学校でカウンセリングを受けられるという環境は、実はとてもラッキーなことだと思います。先ほど述べたように、カウンセリングが身近なアメリカでは多くの企業にカウンセリングルームやカウンセラーが設置されていますが、日本ではそのような体制は十分ではないです。つまり、学生を終えてしまうと、気軽にカウンセリングを受けられる場がないということです。
そのため、迷っている方は、学生のうちにカウンセリングを利用しておくことをおすすめします。カウンセリングを受けたことがあるという経験自体、社会に出た後も役に立つでしょうし、カウンセリングを受けようか迷っている家族や友人に、自分の体験を伝えることもできます。ぜひ、気軽な気持ちでカウンセリングを受けてみてください。
カウンセリングの理解が広まり、身近に気軽に相談できるような雰囲気ができるといいと思っています。